カーペンターとドン・コスカレリ

嬉しいことに、行きつけのビデオ屋に、ドン・コスカレリ監督作のカルト・ホラー映画「ファンタズム」のリマスターDVDが入荷した。
カルトの代名詞の如き噂だけは知っていたので、ドキドキしながら見てみたんだけど、う……う〜〜〜ん。


ちょっと、シュール過ぎるかなぁ……。


空を飛び、ドリルで頭を貫通する謎の鉄球とか、黄色の血を噴き出す謎の怪人トールマンとか、魅力的なアイテムは一杯出てくるんだけど、いかんせん恐怖描写がシュール過ぎるのと、ストーリーの辻褄が合わないのが個人的にはマイナス。
ただ、きっとハマる人はハマる魅力がある一本なんだろうなぁ、とは思った。


ちょっとガッカリしながら今度は、ジョン・カーペンターの「遊星からの物体X」をレンタル。
やっぱり、カーペンターは最高に素晴らしい!
何が凄いって、監督のイマジネーションが見てる人間の想像力を遙かに超越してしまっているトコロだよね。
超越しちゃってるもんだから、凡人の目を通して見ると、アチコチが
「え、何それ!?」
的なおまぬけシーン(例えばこの映画だと、冒頭の低空飛行で飛ぶヘリから犬を狙撃するシュールな描写とか、手榴弾をウッカリ落してヘリ大破とか、御都合主義の血液検査シーンとか)に映ってしまうのだが、それはカーペンターの想像力と低予算でも映画を作ろうとする熱意に、観客の感性が追い付いていないだけなので、決して笑ってはいけないのだ。……多分。


その証拠に、秀逸過ぎるモンスター・デザインを、人間や犬の身体が崩壊しエイリアンが登場する恐怖シーンの迫力を、そして疑心暗鬼に陥ったまま氷の世界に閉じ込められるという秀逸なストーリーを(リメイクですが)見て御覧なさい。
こんな映画はやはりある程度メーターを振り切った人間にしか撮ることはできないだろう。


「ファンタズム」もカーペンター映画も、低予算のホラー映画として、同じ魅力に溢れている。
どっちが優れていて、どっちが劣っているなんてことはないが、ただ、僕はカーペンターの豊富なイマジネーションと、エンタメ精神(それは例えば、作品数の多さにも現われていると思う)が大好きなのだ。