拝啓、ポール・W・S・アンダーソン様、いつもボンクラな映画を作ってくれてありがとうございます

 

 
ポール・W・S・アンダーソンの「デス・レース」を観てきましたよ。
 
今回はいつも以上にネタバレ多めの感想ですので、以下収納しておきます。
 
 
僕は、ポール・W・S・アンダーソン監督の映画を劇場で観るの初めてだったんですけど、いや〜、結論から言うと、監督の予想以上のボンクラっぷりが終始スクリーンに炸裂していて、大変に楽しめた作品でした!
 
あ、念の為に、一応書いておきますと、ポール・W・S・アンダーソンは「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」で世界的評価を高めた、ポール・トーマス・アンダーソンとは全くの別人です。……よく似た名前ですが。
 
ポール・トーマス・アンダーソンが、「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」で自身の作家性をネクスト・レベルにまで昇華し、多方面から評価を受けたのと、ほぼ同時期に、似た名前のポール・W・S・アンダーソンは、殺人レースで囚人と巨乳のお姉ちゃんがボンボン死んでいく映画とか撮ってるわけです。
 
お前は、一体何をやっているんだ!?
 
日本映画で言えば「黒澤明」と「黒沢清」ぐらい、よく似た名前なのに思いっきり開きのある作風です。
 
似た名前の人間が、「マグノリア」で重厚な群像劇を描いたり、「ブギー・ナイツ」で映画界に対して鋭い批評眼をみせたりしてる間に、ポール・W・S・アンダーソンは、「モータル・コンバット」で超人的な格闘家同士が殺しあったり、「バイオハザード」でゾンビと特殊部隊が殺しあったり、「エイリアン vs プレデター」で異性人同士が地球人巻き込んで殺しあったりする映画を撮っていたわけです。
 
この人、いったい……。
 
さて、最新作である「デス・レース」でも、そんな割と知性無視な永遠のボンクラ監督の無邪気なバイオレンスは満載で、相変わらずスクリーンの中で人がよく死んでいました。
 
デス・レース」は、ロジャー・コーマン製作のカルト映画「デス・レース2000年」のリメイク作品なのですが、原作が持っていたブラックなユーモアは削ぎ落とされ、エンターテインメント娯楽大作として生まれ変わっていましたね。この辺りの改変を退化とみるか、新鮮な解釈ととるかは人それぞれですが、元の映画が「レースの途中で、人を轢き殺した数を競い合う殺人レース」を描いた作品なので、単純明快な復讐劇としてのアレンジは、個人的に良い落としどころだったと思います。ってか、今の時代に元の映画をそのままリメイクしたら、色んな方面から怒られるって!
 
舞台設定が、米国経済が破綻して荒廃した世界だったり(偶然だろうけど、タイムリー過ぎ!)、レース中に使える殺人アイテムの使用法が、プレートを踏むと使用可能になるという、「マリオカート」みたいな若干ショボイ設定だったり、ところどころ無駄にMTVを意識した画面作りをしているんだけど、それがまた微妙にダサかったりで、最初から最後まで、ボンクラ映画ファンなら楽しめること間違いなし! な内容なのですが、圧巻だったのは、中盤のレースに登場したモンスター・マシーン!
 
登場も展開も唐突過ぎて、最高でした!(しかも名前は「ドレッドノート」)。本当に、出オチもいいトコなんだけど、その辺りに監督のボンクラっぷりがあふれ出ていて好印象。しかも、その後、ドラマ的には、それ以上の盛り上がりないし!
 
終盤にクライマックスを持ってくるのはアクション映画の定石ですし、「最初から、クライマックスだぜ!」は仮面ライダー電王さんなわけですが、中盤がクライマックスの映画ってのも珍しいですね。
 
そんな良い意味でも悪い意味でも、無秩序過ぎる世界で、主演であるジェイソン・ステイサムの存在感は、想像以上に映画とマッチしていて良かったです。
 
「ロック・ストック・トゥー・スモーキング・バレルズ」や「スナッチ」など、ガイ・リッチーの作品では、トラブルに巻き込まれて終始困ってる小悪党という印象が強かったジェイソン・ステイサムですが、ものの見事にアクション・スターとして生まれ変わっていました。
 
劇中では、UFCファイターばりに、見事な肉体美を披露。
 

 
ザブングルの加藤さん言うところの、「見ろや! この筋肉ぅ〜!!」ですよ。カッチカチやぞ! カッチカチやぞ!
 
正直、惚れました(笑)。いや、ホント、カッコいいよ、ジェイソン・ステイサム
 
何ていうか、ポール・W・S・アンダーソン監督には、この路線を突き詰めていって欲しいな、なんて見ている間、心の底から思ってました。そりゃ、知性はないけど、こういう映画を必要としている人間も、世の中にはいるんだって! 学校生活で、女子に一切縁のない男子中学生とか!
 
でも、ポール・W・S・アンダーソン、何気に作った映画は、ほとんど外してないんですよね。故に、毎回毎回多額の予算を使って、映画を撮れてるわけで……。
もしかしたら、凄い人なのかもしれないけど、パッと見は「馬鹿だな〜」としか形容しようがないところが何気に好きです。次の作品も期待!