ホラー映画のリメイク作って、何故か必ずコケるけど…。−ロブ・ゾンビ「ハロウィン」

 

 
ロブ・ゾンビによるリメイク版「ハロウィン」を観てきました!
 
以下、ネタバレありの感想なので、隠しておきます。
 
 
「ハロウィン」は、鬼才ジョン・カーペンターによる、低予算ゆえの味わいに満ちたホラー映画。
 
ロブ・ゾンビの映画は「マーダー・ライド・ショー」だけ観ていて(続編の「デビルズ・リジェクト」は未見)、その卓越した映像センスに驚愕しながらも、余りにも過剰かつ下世話なサービス精神に「ちょっと、自分がホラー映画に求めてるモノとは違うな〜」って、ちょっと引いて見てたんですよ。
 
すると、何と今度は「ハロウィン」を監督! しかも、今回のリメイク版では、殺人鬼ブギーマン(マイケル)の過去を描くって言い出した!
 
カーペンター好きで、「ハロウィン」ファン(カーペンターが監督した二作目までしか観てないけど…)の自分としては、半ば使命感のような感じで観てきたわけですが、
 
結論からいうと、マイケルの過去を描いた物語の導入部はともかくとして、田舎街で次々に凄惨な殺人が起こる後半は、オリジナル版への最大限のリスペクトと愛情を感じる、割と忠実な再現っぷりで、1800円分はキッチリ楽しめました♪
 
ロブ・ゾンビ、プロですね!
 
それはともかく、本作のオリジナル要素である、マイケルの子ども時代の描写は、とにかく悲惨過ぎ。
 
父親は暴力男で、母親はストリッパー、姉は色情狂、父親の罵倒に、生まれたばかりの幼い妹は常に泣き叫び、汚い罵り言葉が飛び交う家から外に出てみれば、そんな家庭環境のせいで周囲から虐げられる。
  
そりゃ、人格も歪むって!
 
こうして、猟奇的な連続殺人鬼「ブギーマン」の誕生の背景に説得力を持たせているんだけど、ただの陰惨な過去を持つシリアル・キラーとして描いてしまっては、
 
シリアル・キラーが、何故だか不死のモンスターと化する」
 
っていう、オリジナル版のシュールな恐怖感(個人的に「シュールな恐怖感」って、カーペンター作品の最大の持ち味だと思う)が失われてしまう。
その辺の二律背反をどうするの? アンビバレンツをどう描写するの? とか、いったい、どうするんだろうな〜とか思いながら見てたんですけど、そこは稀代の悪趣味系エンターテイナー、ロブ・ゾンビ(どうでもいいけど、嫁が美人!)。
 
自分のやりたいことをやりながらも、きちんと落としどころを見つけて、上手いこと描いていましたよ。
やっぱ、こういう↓アタマの悪い曲を作る人間のアタマの中身は、一味違うと本気で感心しました(笑)。
 
White Zombie / Im your boogie man

 
いや、人間離れした驚異的な怪力を持ち、銃で撃たれても死なないうえに、包丁で刺されても血も出ないなんで、やっぱりオリジナル版同様、「殺人鬼」を越えた「邪悪の権化」へと劇中で変貌を遂げているんだろうけど、決定的なシーンっていうのは上手に忌避してるんだよね。
 
観てる側としては、これが一人の人間が殺人鬼へと変貌していく過程を描いた映画なのか、それとも、人間ではないモンスターが暴れまわる映画なのか、判断がつかない。この辺りのバランスが本当に絶妙で、リメイク版の出来云々抜きで観ていて感心したな。
 
そういう絶妙なバランス感覚を見せつつも、相変わらず下世話なサービス精神は過剰なほど盛り込まれていて、単純にエンターテイメントとしてのホラー映画として、本当によく出来ている。
 
とにかく、ブギーマン強すぎ! まるで、WWEのプロレスを見ているような分かりやすい暴力がスクリーンに延々写し出されていて……と思っていたら、ブギーマン役の俳優さんは元プロレスラーなんだそうだ。なんだ、そのまんまじゃないか。
 
そのせいで、オリジナル版の不気味な恐怖感は薄まっちゃってしまったのが、若干残念でしたが……。
 
ロブ・ゾンビのホラー作家としての才能を再確認できた一本でした。