フェデリコ・フェリーニ「道」

道 [DVD]

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う〜ん……フェリーニの映画に流れる、この底抜けの楽観主義は一体何なんだろうな?


いや、この映画も物語の表層っていうか、単純にストーリーだけ追っていったら、ホント酷い話だと思うんだ。


障害がある女性が粗暴な男に金で買われ、男と一緒に大道芸人としてイタリア各地を回る。
その過程で、男は殺人を犯し、伴侶である女はショックから精神に変調をきたす。
男は、体調を崩した女を、見知らぬ土地に残し旅を続ける。
数年後。
サーカス団の巡業で、再び同じ土地を訪れた男が知った、女の運命は……。


このザンパノって旅芸人が、ホント酷い男で、人に対して暴力振るうし、女が他の男と仲良くしているのを見ると、逆上して暴れ回るし、浮気するし、挙句の果てに、女に盗みをさせようとしたりする。
今の言葉で言うならば、コレでもか!っていうくらい典型的な「DV夫」。


で、女の方もそんなダメダメな男から何故か離れることができない。


なんか筋書きだけ書いていくと、昼ドラみたいだな(笑)。
でも、ホントに人間描写が緻密で、ちっとも安っぽい感じがしない。凄く重厚な人間ドラマ。


ザンパノって男は、粗暴で人としての倫理感に欠けている最低の人間なんだけど、そんな人間が最後に見せる小さな良心が胸を打つ。
ラストは悲劇っていうよりも、「こんなどうしょうもない人間でも、一欠けらの両親は心の内にキチンと持っているんですよ」という、人間を肯定するメッセージに自分には思えた。