brother's sister's daughter(Mike Watt's session band)@八王子 rinky dink studio

この日は半休をもらって、仕事を終えたら即八王子へ。
80年代のハードコア・シーン〜90年代のオルタナ〜00年代のポスト・ロックシーンを駆け抜ける現在進行形の伝説を持つ男、マイク・ワットのライブを見るためだ。


八王子には初めていったのだが、キャバクラや風俗店がやたらと多い街だった。
それでいて、タワー・レコードやライブ・ハウスやanimateもあるというね。東京都下にありながら、大概の若者文化がそれなりに手に入る、という街並みがいかにもスカムな雰囲気で良い。


会場は、ライブハウスではなくて、スタジオ。
今回のライブの主催者であるLiteのHPで、チケットを予約していたので、店員さんにそのことを伝え、チケットを受け取ろうとすると、


「あ〜チケットないんですよ」と。


え?


スタジオでのライブなので、チケットは存在しないと。
関係者や出演バンドのメンバーに直接コンタクトをとって、予約をしているので、入場時に名前を言って入ってください、と言われる。
今回のツアーで(2週間で14本のライブを行うらしい!)、八王子のように、チケット業者がノータッチの会場があったのを知っていたとはいえ、この手のライブは初めてだったもので、「コレぞ!DIY!」と興奮。
とはいえ、そんな仕組みも知らずに会場に向かうなんて、俺はアンマリ粋じゃなかったな。


開場時間までマックで時間を潰し(この日、東京は異常に寒かった!)会場であるスタジオに戻る。
と、待合室を兼ねたロビーにマイク・ワットの姿が!





MINUTEMENの、fIREHOSEの、あのリビング・レジェンドが普通に椅子に座ってくつろいでいる!
マイク・ワット、非常に優しそうな顔で、でもやっぱりパンク〜ハードコアシーン出身らしいオーラがあって、かと思ったら上着のポケットに「りらっクマ」のマスコットを入れたまんまその辺をうろつくような(何故?)ファニーさがあって、そして身体がメチャクチャデカかった!
この辺の、柔和さと激しさが程良く混ざった人間性のバランスは、ジョン・マッケンタイアのような、やはりハードコアシーンから登場した、ポスト・ロックシーンのミュージシャンにも通じるものがあると思った。
流石に圧倒されて、ビビりまくっていたら開場。
エレベーターで、上の階に向かう。振り返ったら、マイク・ワットは、ロビーに備えつけのパソコンでネットをやっていた。
「この人、本当は八王子に住んでるんじゃなかろうか?」と一瞬思う程、自然体だった。


中に入ると、ドラムは地下置き、ギターやベースはアンプからの直。
スタジオ・ライブなんだから、当たり前なんだが客と演者の目線の高さは一緒だ。
酒やジュースは、中にある自動販売機から直接購入して飲む。
集まった客は、100人にも満たない。
インディー・シーンでは当たり前の光景なんだろうが、慣れないもんで、「おい、おい、リビング・レジェンドが、本当に、ココでライブやんのかよ」と思ってしまった。この余りの浅はかさには、後で赤面することになるんだが・・・。


この日は、WE ARE !malegoatLITEherpianoの4バンド
が、マイク・ワットの前に登場。
どのバンドも素敵。
「○○みたい」というのは、褒め言葉として失礼かもしれないが、malegoatの疾走するツイン・ギターが、自分的にCOWPERSを彷彿とさせて、この日特に強く印象に残った。


そして遂に、マイク・ワットによる即興バンドbrother's sister's daughterが登場。
当たり前のように、自分たちで機材をセットし、当たり前のように100人にも満たない観客の前で「音」を鳴らし始める。


空気が変わった。


編成は、ドラム一台とベースが二本のスリーピース編成。マイク・ワットのベースが、まるでメロディーのように、深い音響を刻み、そこにもう一本のベースがノイズをかぶせ、ドラムが錯綜する。


感動なんてもんじゃなかった。ただただ、圧倒された。興奮と音圧で、実は2回吐きそうになった。
いや、もう!・・・凄かった・・・。


DIY」なんて言葉が陳腐に聞こえる程、自然体のミュージシャンが目の前にいて、でもその人は、80年代からパンクの精神を持ち続けている偉人で、アメリカ住んでるのに日本までやってきて、14日間で14本ライブやって、チケット業者も通さずに都下のスタジオで80人くらいを前に全力で音と向いあってて・・・。
で、そういう「凄さ」をひけらかすでもなく、ニッコニコ笑って、気さくに佇んでいるのだ。


ラストは、LITEのメンバーを迎えてのセッション。更には、おまけの一曲まで披露してくれた。


本当に、素晴らしいライブだった。
金や名声のためではない、「音楽」のために「音楽」をやっている一人のミュージシャンがそこにはいた。
正直、かなり価値観が変わったな〜、この日のライブを見て。
こうした機会を与えてくれた、バンド、関係者各位に本当に感謝。
僕は、一生マイク・ワットをリスペクトして生きていきます。