J-POP化したアニソン聞いてるお前ら、水木一郎兄貴の言葉を聞け!

 先週の「よゐこのアキパラ」にゲスト出演された「アニソン界の帝王」「兄貴」こと、水木一郎さんのお話が素晴らし過ぎたので、まだ公式サイトで音声を視聴できるんだけど、わざわざ文字起こしします。

(話は兄貴の下積み時代の話になり・・・)


 兄貴「水木一郎ってのはね、5枚レコードを出したんだけどね、全く売れなかったのね。ホント売れなかったの」
 濱口「そうなんですか?」
 兄貴「もう、辞めようかな、どうしようかなと思って・・・。で、『個性がない』って言われたの、まず」
 濱口「もう今の兄貴からは、考えられないっすね」
 兄貴「『君の歌には個性がないよ』って」
 濱口「それ、嫌な先輩に言われたんすか(笑)」
 兄貴「森進一さんみたいに例えばね、『ふうっふっふっふっ』(※森進一のモノマネ)」
 濱口「(笑)」
 兄貴「(笑いながら)みたいにね、個性付けなきゃ駄目だなって思って」
 濱口「今の兄貴の森進一さんのモノマネですね、いいっすね(笑)」
 兄貴「でも、二番煎じじゃん。それも。・・・で、もう辞めようと。辞めなきゃ駄目だ、この歌謡界は」
 濱口「はぁ、兄貴でも辞めようと思ったんですか」
 兄貴「向いてねぇよ、この世界はって」
 濱口「『個性がない』って言われたんすか。はぁ〜、じゃぁどうしたんですか、個性を付けようと」
 兄貴「それも、ファンの、一般の方に言われた」
 濱口「え!?一般の人に『水木一郎は個性がない』と」
 兄貴「そう」
 濱口「歌い方に?」
 兄貴「その頃の話する?」
 濱口「いや、いいっす、いいっす。泣くでしょ(笑)兄貴泣いちゃうでしょ、止めましょ、じゃあ」
 兄貴「例えば当時、もう売れてた、スターになってた歌手の人達と、一緒にさ、各社レコード会社ナントカの対抗の歌合戦、その後にサイン会とかあってさぁ」
 濱口「はい」
 兄貴「サイン会で並ぶんだよ、俺もコロムビアの代表として。各レコード会社の人達が並んで、俺んトコロ誰も並ばないんだよ」
 濱口「へぇ〜」
 兄貴「誰も並ばないんだよ!でも、レコードは積んであるんだけどさ、誰も並ばないでサイン色紙も積んであってさ、マジック持ってんだけどさ、『どうしようかな〜』って」
 濱口「(笑)」
 兄貴「でも、水木一郎って書いちゃおう〜って。並ばないのに書いたりしてんだよ。で、隣見ると、ドンドンドンドンお煎餅みたいに売れてるわけだよ、で『握手して〜』って。で、俺んトコ全然・・・。でもね、向こうが20人並ぶと、一人くらい並んでくれるんだよ。すると、その一人が『いや〜、アナタ無個性だからさぁ〜』とか言って・・・ドキャーン(※水木節で)だよ、俺なんかよ〜みたいなもんだよ」
 濱口「(笑)当時は言わなかったわけですね。当時、それ言ってたら、個性になってた」
 兄貴「当時は言わなかったよ。心の中で『俺は、やっぱ個性ないのか・・・』って」
 濱口「あ〜〜〜、まだ、水木一郎ができてない時ですね」
 兄貴「そう」
 濱口「それ言うてたら、個性の塊ですけどね。(ドキャーンって)今みたいに言うてたら(笑)」
 兄貴「で、『原始少年リュウ』を歌った時にね、『個性ねぇって言われたし、どうしようかな〜これよ〜』って、レコーディングの時に。でアニメソングの良いところってね、キャラクターがいるんだよ、もう」
 濱口「ハイ」
 兄貴「『リュウはこういう少年です。設定は原始時代です。恐竜もいます』と。『あぁ、そう!』って、原始のジャングルの中を裸足で走ってる少年の、そのつもりで歌ったんだよ」
 濱口「ほう!」
 兄貴「あ、水木一郎じゃなくたっていいんじゃねぇか。あぁ、俺はリュウで歌えばいいんだ!リュウになったつもりで歌ったんだよ
 濱口「ほう、なるほど!」
 兄貴「話飛ばしますけど(笑)その後にね、バロムワンが来たの。『超人バロムワン』」
 濱口「リュウの後に?」
 兄貴「そう、男の子二人なんですよ、主役が。『バロームクロース!』って言うと変身するの、バロムワンに。じゃあ、俺はバロムワンになった、変身した後のバロムワンになろうつって」
 濱口「ええ」
 兄貴「で、バロムワンになりきって歌った。そしたら、バロムワンみたいな感じの声になったの」
 濱口「ブロロロローブロロロローいうヤツですよね?ブロロロロー!」
 兄貴「ブロロロロー(※水木節で)!」
 濱口「(笑)」
 兄貴「僕『個性がない』って言われた後だったから、ブロロロローもね、後で聞いてもらうと分かるけどね、そんな激しくないの。
『マッハロッドでブローロブローロ、ブロロロー』くらいなの」
 濱口「あぁ、当時のヤツはそうなんすか?もう今なんか『ブロロロロー!』言うてるイメージですけどね」
 兄貴「って感じでしょ、でも『ブロロロー』くらいで終ってる。で、その後に『マジンガーZ』。これは僕、迷いましたね〜、兜甲児で歌うのか、マジンガーZで歌うのか」
 濱口「マジンガーZ、ロボットですもんね。どっちの気持ちで歌ったんですか?」
 兄貴「マジンガーZの気持ちで歌った。ロボットの気持ちで。『パイルダーオン』する時は兜甲児の気持で『パイルダーオンするぞ!』ってことで『パイルダー・・・オーン!(※水木節で)』」
 濱口「(笑)そうです、そうです!」
 兄貴「その後は、もう『俺はマジンガーZだ!』と」
 濱口「なるほど!」
 兄貴「そうやって歌っている内に・・・ヒーローが俺に個性をくれたんだよね
 濱口「ほぉ〜〜〜!うわっ、メチャメチャええ話やっ!」

 この後も、兄貴の金言は続くんだけど、とりあえずこの辺で。


 いや、僕はこれを聞いてですね、「アニソンの何たるか」みたいな、アニソンの本質を再確認できましたね。
 「アニメソングの良いところってね、キャラクターがいるんだよ、もう」っていうのは、まさに目から鱗
 そうだよ!そうだよ!昔のアニメソングって、その作品の個性や世界観を的確に表現しているから、作品とセットで記憶に刻み込まれるんだよね。
 アニメソングが1分30秒のJ-POPのコマーシャルソングになってしまった感のある昨今、この辺のトコロをキチンと理解している歌い手がどんだけいるんだって話ですよ!ドンッ(※机を叩く音)


 しっかし、「ヒーローが俺に個性をくれたんだよね」っていい言葉だよなぁ〜。
 やっぱ、兄貴はカッコいいぜ!
兄尊「アニソン」