吉祥寺バウスシアターの爆音映画祭に行ってきました!

ゴダールの「ヌーヴェルヴァーグ」を爆音で観て(映像に対して、時に波紋を、ときに煌めきを与える音の粒子が最高の映画でした! アラン・ドロン、カッコ良かった〜)、ラーメン食べて今帰ってきたところです。


映画も良かったんだけど、上映前にあった佐々木敦さんのレクチャーが素晴らしかったですね。
って、ことで感動冷めやらぬ内に、メモ書き代わりに列挙。
僕の浅はかな理解力では、間違って解釈している部分も多々あると思いますが、まぁ、その辺のノイズも含めたもんが、この手のレクチャーのおもしろい部分だと思うんで、「あぁ、こんな感じだったんだなぁ」みたいな感じで読んでいただければ幸いです。



ステージに佐々木敦さん登場。同時に、客席の照明が全て落ちる。佐々木さん「こっちから、お客さんの顔が見えないので怖い」と。メモが取りづらい。


先ずは「ヌーヴェルヴァーグ」についての簡単な説明。「ヌーヴェルヴァーグ」っていうと、いかにも難解なものに聞こえるが、英語に直せば「New Wave」。「ニュー・ウェーヴ」は、音楽や文学の世界でもあるもので、じゃあ「ニュー・ウェーヴ」とは何かと問えば、それは「過去の形式的・正道的な表現へのアンチテーゼ」である。


次に映画とは何か? という根本的な話。映画とは「現実であったものの切断」である。
私たちは、延々と流れる無限定の時間の中に生きているが、映画を撮るということは、カメラで区切ることによって、時間に最初と最後を作る作業である。カメラで区切られた時間は、異なるフレームに入っていく。


映画が始まった時、それはサイレントであったが、個人的には、それは単なる技術の未成熟故の欠損であり、もしも映画の誕生と同時期にトーキーの技術があれば、映画は最初から音を伴って生まれてきたに違いないと考えている。


不可能性が可能性を生み出す、ということについて強い興味を持っている。世の中にある表現、芸術と呼ばれるものには必ず足りないものがある。例えば、現実の世界ではできても、小説の世界ではできないものとは何なのか?
自分は思考法として、物事の「不可能性」から出発することが多い。


ヌーヴェルヴァーグの作家達は、リアリズムを追求した。それは、映画をリアルに近づけることによって、不可能性をポジティヴに認識する能動的な作業であった。


次に、映像と音の関係についての話に。ゴダールカルメンという名の女」のワンシーンの上映

トム・ウェイツの音楽が流れる中、主人公である男女が会話を交わし、痴話喧嘩をするシーン。カットが入る度に、BGMである音楽が一部巻き戻り、見る者に不思議な違和感を残す。

映画の音には、物語りのエモーションを盛り上げる効果もある。レイとしてガス・ヴァン・サント「エレファント」のワンシーンの上映。

ベートーヴェンピアノ曲をバックに、男子生徒が校内を歩いていくロングカットのシーン。
ドアを閉める音や、生徒の声などの同時録音で撮られた「音」が異様にアンバランスで、そこに空気の振動音が重なり、映画の不穏な空気を演出している。

次も、「エレファント」から、今度は男子生徒が校内で銃を乱射するシーン。セリフや効果音のバックで、水のせせらぎの様な不可思議な音が流れている。

佐々木さんの解説によると、これは実は「音楽」で、フィールドレコーディングによって録音した音源を、電子音楽として加工しているカナダのミュージシャンによるものだ、とのこと。
ミュージシャンの名前は聞き逃してしまったが、同監督の「LAST DAYS」でも、同様の手法が使われているらしい。


今度は、録音による音だけの演出、あるいは音楽だけによる演出もあるんだよ、という話。
例として、ジャン・クロード・ルソーという映画監督の短編映画と、アキラ・ラブレーというミュージシャンのミュージックビデオを紹介。
前者は、中年男性がセリフもなくホテルの一室を動き回るだけの映画で、窓を開ける音や、目覚まし時計の音、外を走る救急車のサイレンの音など、「音」だけで映画が構成されていた。
後者は、曲に合わせて、女性が髪を延々といている非常にミニマルなミュージックビデオ。
どちらも、なかなかおもしろかった。


話はもう一度、「不可能性」の話に戻って、映画における不可能性を逆手にとって、映画の表現を広げたのがゴダールの功績であるという結論に。



実は、以前に佐々木敦さんのゴダール論は聞く機会があって、話の内容も教材も結構被ってたんだけど、やっぱり今回も、おもしろくて、刺激的でした。
この話聞いた後で映画を観るんだから、そりゃ惹きこまれるわな。


爆音映画祭、23日まで引き続きバウスシアターで行われています!
最終上映はジャック・ブラック主演の「スクール・オブ・ロック」で、あの映画をあの音響で観るのは、かんなり気持ちがいいんじゃないでしょうか? 同日池袋で、チョップリン主演の自主制作映画の上映会があるため、僕はどっちに行くかまだ迷っているんですけど、お時間ある方はこの機会に是非吉祥寺へ!
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