ひたすらジグソーパズルのピースを集める

過ぎ去った過去に、深い憧憬と愛情を持ち、ひらすらに固執をする人間がいる。
さらにその時間軸と場所に、自分が存在しなかった場合、その執着はより強固なものとなり、ありとあらゆる手を尽くして、自分が体験できなかった時間、可視できなかった空間を自分なりに再現しようとする。


パーツの数も分からない、全体像も分からないジグソーパズルのピースをひたすら埋めていく行為。
ある時は、ピースの数が全然足りずに終わることもあるし、またある時は、やっと完成したと思ったジグソーパズルが、実は更に大きなパズルの一片にしか過ぎなかったことに気付く。


自分がいなかった時代を後追いで、全て再現しようなんて、どだい無理な話だ。
でも、決して止められない。例え、目の前にある本来自分が存在すべき時間軸を蔑ろにしてもだ。


僕は、80年代にイギリスとアメリカで同時多発的に起こった音楽の革命、UK NEW WAVEとUS Hardcoreという二つのムーブメントに取りつかれている。
この二つの革命の基盤となったのは、数多のインディー・レーベルであり、後にアメリカでオルタナティブグランジ・ムーブメントとして、突如メジャーシーンに噴出するものの、あくまでアンチ・メジャーとしての活動、つまり地下シーンの中での動きであった。


未だにこの辺の音楽は、例えば「ロッキン・オン」を始めとするメジャーな音楽シーンからは、正当な評価を受けていない。
時折光が当たるのは、あくまで地下シーンの中から突発的な成功を収めた一部のミュージシャン、バンドだけだ。
当時の熱狂、革新性を追体験するには、到底及ばない。
だから、さらに固執する。自分が執着する以外に、その時代に近づく術はないから。


80年代US HARDCOREシーンを代表するレーベルにSSTというレーベルがある。
BLACK FLAGのメンバー、グレッグ・ギンが中心となって活動を開始したこのレーベルは、後のオルタナティブ・ムーブメントの萌芽となる幾多の奇妙奇天烈なバンドを数多く生み出した。(そしてその活動の結果は、90年代前半SOUNDGARDENの大ブレイクという形で、アメリカの音楽シーンに突如表面化する)そんなSSTレーベルの代表格MINUTEMENの元メンバーであり、バンド解散後はfIREHOSEを率いて、
ハードコア〜オルタナティヴを駆け抜けた男マイク・ワットが来日をする。


http://www.cdjournal.com/main/news/news.php?nno=17837


僕は、勿論見に行く。
この行為は僕にとって、ただ単にライブを見る、音楽を聴くという以上の意味がある。
17日、八王子でのライブが終わった後には、僕の手元には新しいパズルのピースが手に入るはずだ。
今は、その時が来るのを心待ちにしながら、ひたすら興奮して毎日を過ごす日々なのだ。