GET ON THE BUS

 

 
スパイク・リー監督作品。レンタルDVDで。
 
ワシントンD.Cで開かれる大規模な黒人デモに参加するため、長距離バスに乗り合わせた男達。
同じ肌の色、同じ目的を持った人間同士にも関わらず、旅の途中で、お互いの文化的な背景、主義主張の違い、政治的イデオロギーなどが徐々に軋轢を起こしていき、彼らが内包する問題が明らかになっていく。
家族、同性愛、政治、貧富の差、犯罪、そして人種差別・・・。
衝突を繰り返しながら、なんとか目的の地、ワシントンD.Cにたどり着いた彼らをある「悲劇」が襲う。
果たして5000キロもの旅の果てに、彼らが得たものとは何だったのか?
 
同監督の「DO THE RIGHT THING」は、異人種間同士の日々の鬱屈のエネルギーが、物語のラストで暴動という形となって爆発する、PUBLIC ENEMYの音楽を視覚化したが如き、凄まじい「熱」を持った作品だったが、今作はアフリカン・アメリカンの「怒り」を啓蒙的に表現したものであり、明確なメッセージ性が全編を通して描かれている。
スパイク・リー独特の色彩感覚とカメラワークは画面上で縦横無尽に表現されるものの、物語は基本的に長距離バスの中で進んでいく密室劇、故に人間関係の緊張感は絶えず観る側に伝わり、アフリカン・アメリカンの苦悩や怒りなど、0.001ミリも理解していないであろう日本生まれ日本育ちの典型的モンゴリアンのボンクラ(俺)ですら、色々と考えさせられてしまった。
 
DO THE RIGHT THINGの爆発力こそないものの、非常に良い映画です。