トビー・フーパー!

悪魔の沼 [DVD]

悪魔の沼 [DVD]

トビー・フーパーのホラー映画が、他のホラー映画とは一線を画す点。
それは、観るものの神経をひたすらイラつかせ、破壊しようと「本気で」撮っている点である。
だから、大量の血糊や、露骨なスプラッター描写は登場しない(ま、あくまで「ブレインデッド」とかその辺に比べれば、でありますが)。代わりにスクリーンに広がるのは、不快なノイズと、登場人物のヒステリックな演技と絶叫、そして独特の真っ赤な色彩である。
悪魔のいけにえ」以降に撮られた本作も、やはり「悪魔のいけにえ」同様、そうしたノイズとヒステリックな描写で構成されている。
しかし、この作品の「不快さ」が特に際立っている理由は、メインで殺人鬼のターゲットにされる対象が「家族」である点と、何といってもやはり殺人鬼の容姿が「冴えない普通のオッサン」であるからだろう。
悪魔のいけにえ」に登場する殺人鬼レザー・フェイスが、狂い過ぎているが故に、やがてデザインとして洗練され、パンク・バンドのバンド名として使用されたり、覆面レスラーとしてリングに登場したり、挙句の果てにはハリウッド映画として再生したりと、ポップ・フィールドで消費されていく様は、例えばダニエル・ジョンストンであるとか、ダーガーの絵画の様に「狂っている人が作った作品が、なぜかポップさを持つ」という共通点があって、それはそれで興味深いのだけれど、「悪魔の沼」の殺人鬼、変態ホテルの支配人ジャドおじさんは、そうしたポップさを一切拒否する。
もう、見た目完全にただのオッサンが、大鎌や農耕用の鋤で人殺して、池のワニに喰わすんだもん。しかも、コイツが人殺す理由がサッパリ分らん。
爽快感とか一切なし、ひたすら不愉快で人をイラつかせる犯行が次々と重ねられるのである。トビー・フーパーは、やはり狂ってるとしか言い様が…。
観てる途中で、三回くらいブラウン管をブン殴りそうになりました。