負け犬たちのアートによる遠吠えが世界を変える − 「ビューティフル・ルーザーズ」

 

 
90年代のアメリカのアートシーン、ユースカルチャーを、当事者であるアーティスト達のインタビューを基に検証するドキュメンタリー映画
地元のミニシアターのレイトショーで。
 
僕は、「アート」なんつうものに関しては、「アレだよな、キース・ヘリングと、ヒース・ヒーリングって名前似てるよな」くらいのコメントしか出てこない、ホトホト朴念仁な人間で、この映画で描かれているアートやデザインの知識もほとんど知らないまま観に行ったんですが、それでも大きく心を動かされました。
 
特に、物語導入部、90年代のストリートにおけるグラフティや、絵画、映画、アパレル・デザイン、ヴィジュアル・デザインなどの若者文化に革命を起こしたアーティスト達が、如何に学校でメインストリームから外れていて、マイノリティーであったかという話をそれぞれが語るシーンがとても良かった。
 
学校で異端であった彼、彼女らを支え、居場所を与えてくれたのは、アメリカのハーコアパンクでありHip Hopであり、そうした音楽とクロスオーバーした、スケボーやサーフィンやグラフティだった、と。
一般音楽誌からは無視されがちなアメリカン・ハードコアだけど、こうやって才能のある人に確かに多大な影響を与えていたのだ、っていうのを再認識できて嬉しかったなぁ。
 
で、そういった音楽やストリート・カルチャーに影響を受けたアーティストが、Sonic YouthAirトミー・ゲレロみたいな先鋭的なアーティストのアルバムを手掛けるようになる、というね。これは、もう立派な物語だと思いますよ。
 
映画に登場する「作品」の中には「Andre the Giant Has a Posse」Sonic Youthの「Washing Machine」のジャケット、ビースティーズの諸作品みたいに、僕みたいな朴念仁も知っているような、有名なデザインも出てきたりして親近感も感じられたし、「アート」のドキュメンタリーとして堅苦しく観るよりは、社会からフリーク・アウトした異端な人間のサクセス・ストーリーとしてリラックスして観るのが正しい作品だと思う。
 
マニー・マークによるミュージック・スコアも素晴らしかったですね。
 
レイトショーでの上映だったんですが、如何にもアートスクールの生徒って感じの若い子が沢山観に来てて、なかなかの盛況でした。中にはこの映画に影響を受けて、明日から走り出す若者が出てきたりするのかなぁ、とか思うと微笑ましかったり。
僕は、年を食いすぎてるし、センスもないから、もう駄目だけどね(苦笑)。
 
帰宅後、久々にSonic Youthの「Washing Machine」を聴き返したんだけど、
 

Washing Machine

Washing Machine

 
映画を観た後だったから、凄く心に沁みたなぁ。アートって、思い入れの受容体だ。